Trans-Asia Express 7
ワン港駅からのテヘラン行き列車の旅は、まさに混沌・大混乱の指定席無視・コンパートメント争奪戦で幕を開けた。僕はもう呆然、仲良くなったイラン人ナセル夫婦とレザルにすべてを任せ、とあるコンパートメントに落ち着くも、後からやってきた老婆のものすごい剣幕に圧倒され、全員で別の部屋へ。
ようやく落ち着いたので食堂車に連れて行ってもらい、定食メニューを頼む。鶏肉のてり焼き、豆のスープ、サフランライス。トルコ料理とは違う。「ビールを」と頼んだら、ない、とそっけない返事。
レザルがにやりと笑って言った。「ここはもう、イランなんだよ。」
イランへの入国は予想外に穏やかなものだった。国境駅で延々と停車して、荷物車両の検査待ち。最初は車内で大人しく待っていた乗客たちだが、おだやかな陽射しの降り注ぐ高原の駅に誘われるように、ひとり、ふたり、ホームに降り立つ。ナセルがどこからか調達してきた紅茶のポットを囲み、ホームでピクニックが始まった。
ナセル夫人から「日本の歌を歌って」とせがまれ、うろ覚えの歌詞を口ずさむ。
川は流れて どこどこ行くの
人も流れて どこどこ行くの
そんな流れが つくころには
花として 花として 咲かせてあげたい
泣きなさい 笑いなさい いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ
けっきょく、列車は国境駅に6時間停車し、10時間遅れで発車した。でも、あわてるそぶりなど、誰も見せない。
岩山の渓谷を抜け、塩の湖を見下ろし、小さな駅で老人と子どもに見送られて、ゆっくり、ゆっくり、列車は東に向かう。
トランスアジア・エクスプレス。名前だけは壮大だけどローカル列車そのものの旅を満喫して、もうすぐ4度目の夜、それが明ければいよいよテヘランに着く。一人旅の寂しさと楽しさを全身に浴びた旅ももう終わりだ
ユウマ、父さんはもうすぐ帰るよ。
線路は続くよどこまでも。
ユウマの歌声をBGMにして、スライドショーをやろう。