整体の法制化に対する私見
私たち民間団体認定資格者の頭を日々悩ませている法制化の問題とは一体どういうものでしょうか。
この問題はもう50年以上も前から実は騒がれていた問題なんですね。しかも当時のほうが近年よりもずっと切迫していたようです。
私、太田均整治療院院長の見解を述べたいと思います。
【序論】
平成17年10月に私は東京都の担当部署にある事の意見陳情に伺いました。意見陳情の内容には触れませんが、この時は二人の担当官が対応して頂けましたが、非常に親切かつ丁寧な対応で、陳情というよりは、意見交換の形になりましたがとてもよい感触でした。その中でも私の所属する団体の3回にわたる新潟県中越地震ボランティアが非常に高く評価されました。
この夏ころから、私は医歯薬出版から出されている「関係法規」を熟読していたので、自分の中で法制化に対する考え方の機運が高まっているときでもありました。この本を読んでいると、自分たち民間団体認定資格者が、今後どのように法制化対策を進めていけばよいのか、自ずと見えてくるからです。言い換えれば法制化対策に対する答えが書かれているのです。
果たして整体業界に生きる団体の役員は、一体どのくらいの方がこれを読まれたのでしょうか。
【整体の法律って何?】
まず私たちは、整体師にはそれを包括する法律というものは存在しないということを認識しなければなりません。現在我々が法と呼んでいるものは、医業類似行為者の関係法令を自主的に準拠しているに過ぎません。
この年の11月(平成17年)に、ちょっと調べものがあり、厚生労働省の担当窓口(厳密には国家資格者の窓口)を訪問した折に、担当官に少し質問をぶつけてみました。内容は以下の通りです。
太田
「東京都では施術者の資質の向上等を目的として、関係5社団に施術者講習会を昭和40年代から事業化して実施しています。昨今ニュース等で騒がれているように施術の事故や違法治療行為などが話題となっていますが、我々としては、自主的に倫理道徳の向上に努めてはいるもののそれも限界があり、行政からの法令等に関する講習会等を開いていただけると、我々にとって非常に有益なものとなると思われますが、そういった講習会は開いていただけないのでしょうか。」
担当官
「まず法令とはなんですか、あなたたちは民間団体認定資格なのだから法はないのですよ、そういう人たちにどうやって法令講習を行うのです。」
言い回しは少し遠まわしでしたが、内容はそういうものでした。
太田
「では我々はどうしたらよいのでしょうか」
担当官
「あななたち業界内で自主的にやってください。」
太田
「では厚労省で力を入れている事業とは何でしょうか?」
担当官
「国家資格の人たちとともに、違法者を排除している。」
予想はしていたもののここまで無理解ではっきりいわれたので、ショックでした。(我々は違法者ではありませんが。)
数年前話題になっていた手技療法師の話など、どこへ行ってしまったのだろうという感じです。
少なくとも、この時点感触では厚労省は我々の味方にはなりえない。
しかしながら希望がないわけではありません。厚労省は平成16年から(財)全国療術研究財団を持つ全国療術師協会へカイロプラクティック手技に対する研究に対して、研究費を事業として捻出しており平成19年も継続されています。
ある意味これは整体業界にとって希望の光ですね。
今後、整体業界では厚労省所管の財団を持つ療術がリーダーシップを取っていくことが、過去からの経緯を考えると自然と考えますし、他団体もこれに協調していく事が法制化問題の解決の近道とも考えられますが、そこには問題がいくつかあります。
一番大きな問題としては、手技の統一化ということです。整体手技にはカイロプラクティックもあり、リフレクソロジーもあり、リンパ操法などもありと、その手技は多岐にわたっています。遠い将来免許交付ということが現実味を帯びてくれば、これらの異なる手技に対して、どう法制度化していくのかいう議論が必ず起こってくると考えます。
現状、療術では(財)療術研究財団の中央研修所を修了すると、厚労省の半分お墨付きとも言える修了証が授与されるそうですが、その内容については、カイロ手技、電気、温熱、光線についての修了証ということになります。
つまり、リフレクソロジーやリンパ操法などの手技を行っている人たちにとっては異なる手技の修了証ということになるわけですね。
整体業界が仮に以前話題になった手技療法士という異なる手技を大きな枠で一つにくくった法制度化を今後目指すのであれば、この手技の統一化という問題、言い換えれば手技における共通性が問題になってくると考えます。もし、その手技の共通性が見出せなければ、カイロなり、リフレなり、リンパなり、それぞれ個別にその安全性を検証していかなくてはならないからです。
【ではなぜ民間団体認定の整体が営業できるのか?】
これは昭和35年のHS式無熱高周波療法の最高裁判決において、医業類似行為は人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為でなければ禁止処罰の対象とならないとしています。
なおこの判例では、公共の福祉に反する行為であるか否かが論点になっています。
整体は全てこの最高裁判決を営業できる根拠としています。
【締め付けに対する対応は】
あんま、マッサージ、指圧と異なる手技であるという明確な説明ができれば、締め付けということを気にすることはまったくないし、また第3の医業類似行為であると主張できるわけですが、もし仮に地方の温泉街などで誤解を招いてしまった場合、これは、なんと言ってもあんま、マッサージ、指圧などの手技と自分たちの手技とは、明らかに異なるものであるという具体的な差別化された手技として説明できること、言い換えれば文章で示せることです。
ただ注意しなければいけないのは、整体業界人が納得しうる文章であっても、不特定の第3者が読んでわかりにくいものではいけません。彼らが読んで十分に納得しうるわかりやすいものでなければいけません。
我々が注意しなくてはいけないことは、自分が知っていることは相手も知っているという前提で話を進めてはいけないということです。自分が知っていることでも相手はまったく知らないという前提で話を進めていかなくてはなりません。
【整体師の準拠すべきもの】
私たちが関係法規を準拠していくのであれば、一番大切なことは・・・・
例えば言葉の問題で、治療という言葉を施術に置き換えたり、患者という言葉をクライアントなどと置き換えたり・・・などということでは決してないと思います。
一番大切なことは医療法の中に流れる理念を学ぶことです。
その理念の一つに、医業行為者は利益を追求することは好ましくないということです。なぜなら利益を追求する必要性がないように彼らは法で守られ、また保健ポイントも適用されていると考えられるからです。
ですから、例えば患者さんを如何にリピートさせるかという考え方を優先させると利益追求となり、リピートはあくまで患者さんの身体を親身に考えての結果でなくてはいけません。この順序を決して間違えてはいけません。
我々団体認定資格者も準拠するのであれば、まず利益はクライアントの身体を考えてのあくまでも結果であり、リピート回数優先の利益追求であってはならないのです。またこの観点から自分の整体院を有限会社、株式会社化するのは好ましくないともしています。
まず何よりもこの理念を準拠すべきであり、優先すべきことであると考えます。
まぁ、現実問題としてはこのあたりの考え方は程度問題という気もしますが、やはり医療法下の流れる理念というもの、医業行為者、医業類似行為者、そしてそれを準拠する者は、通常の就業者とは大きく異なるということは頭に入れておかなくてはならないことであると考えます。
【言葉の表現には注意しなければいけないけれど】
先ほど話題にした言葉の適正な置き換えの問題ですが、我々整体師は、治療という言葉を、当然のように施術という言葉に置き換えていますが、果たしてこの言葉は本当に適当なのでしょうか。関係法規をお読みになればわかることですが、施術という言葉が頻繁に出てきます。そうするとこれはもしかして国家資格者用の言葉ではないだろうかという疑問が沸いてきます。
ある人は、「施療ならいいんだよ」といいますが、この施療の「療」の字の意味には「病気をなおす」という意味が含まれていますので、療術という言葉がすでに行政に認知されている療術師以外の整体師がこの言葉を用いるのは問題があるようにも思えます。
こう考えていくと我々整体師にとって適当な言葉の表現は一体何かと、大いに頭を悩ませる次第であります。
整体団体の役員の方には関係法規を抜粋ではなく、是非ご一読することをお薦めします。
【屋号について】
当院の屋号である太田均整治療院は昭和40年代(父の代)からこの屋号ですが、平成14年に実施された施術者講習会で、関係法規を担当された東京都の女性担当官に質問してみました。
つまり、太田均整治療院という屋号についてどうお考えになるかということです。
すると以下のような回答がありました。
「最近は緩和の動きを見せているが、治療院、クリニックなどを屋号に用いている場合、例えば太田治療院、太田クリニック、このような屋号の場合はそこで何をやっているのか屋号からは全然わからないので、これは問題である。治療院、クリニックの前にそこで何をやっているのかわかるようなものがある方がまだよい。」
確かに関係法規でも、そのようなニュアンスの書かれ方がされていますね。
そういう意味では、太田均整治療院は「太田身体均整法施術治療院」というような形のほうがまだよいのでしょうか。
そして当院の屋号に対するアドバイスとして、
「太田均整治療院の場合、この均整という言葉がいまひとつ具体性に欠ける感があるが、行政からただちに処罰の対象になることはないと思うが、それよりも有資格者等他者からのクレームに気をつけたほうがよいと思う。」
という回答でした。
屋号についてはグレーゾーンというところでしょうか。
【法制化が表面化するのはいつ?】
現在東京都で行っている施術者講習会も予算縮小の関係で縮小傾向にあると担当官は答えています(平成17年10月)。法制化の問題も厚労省が具体的に事業化しなければそれは先に進みません。ではそれは一体いつか・・・・
どんな事業も当たり前のことですが、予算がつかなければ事業化できません。つまりまだ事業化する予算がないのです。もっと他の案件で優先すべき事業がたくさんあるからです。
事業化されるには、日本経済が大きく潤い、税収が潤沢になる必要があるわけです。つまり景気が大きく好転しなければ、予算がつけられず事業化の見通しが暗いわけです。
しかしながら、将来、日本経済が大きく好転したそのとき、既存事業のほかに新事業を実施するだけの予算が可能となり、そのとき初めて法制化問題が事業化され表面化してくるものと思われます。またこの時各都道府県の税収も潤沢になっているので、厚労省の事業が都道府県にシフトされ、こちらでも様々な法制化に関する事業が表面化してくるものと思われます。厚生労働省として事業としての上位計画が策定すれば、都道府県に下りてくるのも時間の問題です。
結論としては、法制化の問題が表面化するためには、日本経済が大きく好転する必要があるということです。
【整体の進むべき道は】
整体には先ほども述べましたように、法がありません。ですからあくまで医療法に準拠してその枠の中で生きていくのか、あるいはその枠を超えて新しい道筋を求めていくのか私たちは選択しなければなりません。
厚生労働省が一部の違法者を締め付ける動きを見せる一方で、経済産業省は海外の手技療法(国内では団体認定資格)を推進している一面があります。つまりこの2省は相矛盾してることをしているんですね。
手技療法については、現在関係している省庁として主なものは、厚生労働省、経済産業省、外務省が挙げられるかと思います。
なおこの海外の手技療法の中には、日本の地方の農村に突然ボランティアと称して移動バスで乗り付けて、施術をするというものがります。そして2〜3ヶ月すると突然いなくなってしまう。これは日本人の身体のデータを集めるために行うものであり、その目的は、そのデータを他国の手技療法の団体に持っていくと、その団体認定の資格が交付されるからです。
ボランティアと称して、そんな目的のために地方の農村を荒らしているグループがあるということも地方の整体師から聞き及んでいます。私たちも中越地震ボランティアのときデータを取りましたが、その目的は所轄の社会福祉協議会に被災者の身体の状態を知って頂くためのものでしたから、ボランティア終了後帰路に着く前に、所轄の社会福祉協議会にデータを提出しました。
余談ですが、中越地震のとき最初に行った旧堀之内町で我々が一人一人の問診表をつけていたら、帰る前に、「被災者の健康状態を知りたいので、問診表を見せて欲しい」と社協の人が問診表を見ながら、被災者の健康状態をその場で一生懸命集計し始めました。
それを見て、私はそんな作業(少人数でやると結構大変なのです。)なら、我々でやってあげましょうと、次回の被災地訪問から健康状態のデータ集計したもの社協に提出することにしたのです。
【余談】
数年前(平成14年秋に実施された療術関東ブロック講習会にて)、厚生労働省担当官の関係法令講習で、面白いことを聴きました。
ちまたの歓楽街で、「性感マッサージ」などの風俗店の看板を見かけますが、この看板自体は規制は現状できないんだそうです。そのお店の中でマッサージ師の資格を持っていない者がマッサージ行為をしていればもちろん違法行為として処罰の対象になりますが、看板それ自体の規制は現状できないんだそうです。
不思議ですね。
【最後に】
新潟県中越地震のボランティアに行った2回目のときに、既に国家資格のある団体が現地入りしていました。ボランティアセンターに連絡を入れるとそちらと調整して欲しいということだったので、担当責任者と連絡をとったところ、「病人を扱うので、国家資格に方に限らせてもらっている。ただしボランティアの方も非常に疲労しているので、そちらでよかったらお願いしたい。」という返事でした。
この団体のサイトを見ると、民間団体認定資格者を否定していることを明確に掲載しているので、当然といえば当然ですね。我々としては疲れている人を癒しに行くわけですから、被災者ではなくボランティアの人たちへの施術を了承し、現地入りしました。
そして当日この団体の責任者にご挨拶に行くと、「保健所の所長の指導でそういう形になってしまった、申し訳ない。」ということでした。彼らも東京からわざわざ来た人間をむげにはできないわけです。
団体としては、国家資格者の存続に関わることですから、違法者排除(民間団体認定資格者は違法者ではありませんが。)という動きを打ち出さなくてはいけないわけですが、国家資格者個々人は必ずしもそうではないと思います。直接話せばわかります。
国家資格、民間団体認定資格の者が入り乱れて、この業界人口が淘汰を迎えつつある今日、自分たちのテリトリーを守ることも大切ですが、そういう時代にこそお互いの垣根を越えて、手技者としての資質の向上、技術の向上を考え、わが国の保健福祉に如何にすれば貢献していけるのかを考えなければいけないのではないでしょうか。
いつの日はそんな時代が来ることを期待して結びとします。
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