2004/07/06 (産経新聞朝刊
よど号犯の帰国容認 北朝鮮、4容疑者が要請( 7/ 6)
 【ソウル=久保田るり子】北朝鮮の朝鮮中央放送は五日、一九七〇年三月の「よど号」乗っ取り事件の犯人、元赤軍派メンバーたちが北朝鮮政府に「日本に帰国できるよう協力してほしい」と要請する手紙を送ってきたと報じ、「わが方は彼らが自分の祖国に帰ると言ったことに反対しない」と帰国を認める方針を伝えた。

 北朝鮮側の曽我ひとみさん一家のインドネシアでの面会決定に続く、「よど号」メンバーの「手紙」報道は、対日関係の改善に向けた北朝鮮側の意思表示とみられる。

 帰国表明したのは、小西隆裕容疑者=国外移送略取容疑などで国際手配=をはじめ、赤木志郎、若林盛亮、魚本(旧姓・安部)公博の四容疑者。

 北朝鮮の報道によると、「よど号」犯人メンバーは手紙で家族の大部分が日本に帰国し「これ以上残る必要がなくなった」として「日本政府の関係者と直接会って帰国問題を討議できるよう支援してほしい」と求めたという。

 これに対し、報道は北朝鮮政府の立場を「『よど号』問題はどこまでも日本政府と元赤軍派メンバーらの間で直接協議、解決すべき日本人らの内部問題」として帰国を認める方針を示した。

 四人はすでに二〇〇二年七月、警視庁による逮捕を覚悟で帰国の希望を関係者に伝えている。今回は「手紙」によるメンバーからの要請という形を取っているが、帰国問題は北朝鮮側の政治判断にかかっていた。五月の小泉純一郎首相と金正日総書記の日朝首脳会談でも日本側は「よど号」メンバー引き渡しを求めていた。

 「よど号」メンバー帰国への北朝鮮政府の“協力”は日朝間の懸案解消の一環だけでなく、米国の「テロ支援国家」指定解除の条件でもあるため、国際世論への戦術もあるとみられる。

                  ◇

 よど号事件 昭和45年3月31日、武装した赤軍派メンバー9人が、羽田発福岡行きの日航機「よど号」を乗っ取り、乗客乗員計129人を人質にして北朝鮮に渡った日本初のハイジャック事件。9人は国外移送目的略取容疑などで国際手配されたが、田宮高麿幹部ら3人が死亡、2人が帰国して逮捕され有罪判決を受けた。現在、北朝鮮に残っているのは4人。


@

2004/07/06 (産経新聞朝刊
よど号犯帰国容認 事実上の強制退去か 公安当局分析、北「日本に貸し」狙う( 7/ 6)
 「よど号」乗っ取りメンバーが日本への帰国に向けた協力を北朝鮮政府に要請したことについて、日本の公安当局者は「形式的にはメンバー側の意向となっているが、北朝鮮の国家意思による事実上の強制退去ではないか」と分析している。

 よど号メンバーはこれまでも日本政府筋や支援者らに帰国の意思を示してきたが、日本にいる支援者によると、北朝鮮政府への公式な要請は初めて。今回の要請は北朝鮮の官製メディアを通じて発表され、メンバーと連絡を取り合ってきた日本の家族や支援者らには事前に知らせておらず、関係者らも驚いたという。

 支援者は「帰国するのは自由意思だが、国外への強制退去や日本への身柄引き渡しは、故金日成主席が迎えた客人を追い出すことになり、北朝鮮のメンツにかけてできないはず」とみていた。

 公安当局者は「事実上の強制退去」と分析する理由として、(1)テロリストであるよど号メンバーへの保護をやめ米国によるテロ支援国家指定の根拠を減らす(2)五月の小泉純一郎首相の訪朝時、首相から直々に要請されたメンバーの引き渡しに応じることで日本側に“貸し”をつくる−の二つの狙いがあるとみている。

 一方、魚本(旧姓・安部)公博容疑者が有本恵子さん=当時(二三)=拉致事件に関与したとして、結婚目的誘拐容疑で国際手配されるなど、よど号メンバーには拉致事件への関与の疑いも強まっている。捜査当局はグループが帰国し次第、それぞれの容疑ですみやかに逮捕する方針だ。

 よど号グループによる拉致実行は北朝鮮機関との連携・指揮で行われたとみられている。公安当局者は「グループの日本帰国は北朝鮮にとって『拉致事件は北朝鮮の国家犯罪』という事実を証明しかねない賭け。そのグループをあえて帰国させるのは、それでも北朝鮮の対米、対日交渉においてよど号メンバーを切り捨てざるを得ないという北朝鮮側の事情からではないか」との見方を示した。