うつ病
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 気持ちがふさぎ込むとかやる気がでないというのは誰でもあることですし、時間が経てば回復します。ところが原因不明の身体症状が続くのがうつ病の早期の症状です。心理的原因がないうつ病は内因性とよばれ、研究が進んでいるメランコリー型うつ病について紹介します。

 心の病気なのに、最初は体の症状として出てきます。たいてい寝つきがわるくなったり、夜間や早朝に目が覚めてしまいます。食欲や性欲が落ちてきて、疲れやすい、なんだかだるいと感じます。「夏ばてかな」と思って休んでみても回復しません。肩こりや腰痛、手足の冷えやしびれ、下痢、便秘、吐き気や微熱、後頭部あたりの頭重感などがあるので脳神経外科や内科に行き、いろんな検査を受けても異常は見つからず、偏頭痛とか、自律神経失調症と診断され、薬をもらって飲んでもなかなか治りません。

 さらに、感情障害と呼ばれているように独特の精神症状が附随します。
まず、気分が沈み込みます。心にいつも重い雨雲がかかったようで晴れません。それまで好きだった音楽や趣味の園芸やスポーツに興味がもてなくなります。家事や仕事にとりかかるがおっくうに感じるようになり、たとえやっても、はかどりません。またこれらの気分は変動があり、たいていは午前中が悪く、午後からよくなるといわれていますが、患者さんによっては逆に表現する場合もあります.。

 病気がさらに進行すると、すべてのことを悲観的に考え、自分を極端に卑下するようになります。何かにつれ、私が悪かった、すまなかった、迷惑かけたと自分を責める言動が目立ちます。職場では何事もなかったように気丈にふるまうことも多く、それも限界に達したら破綻がきてしまいます。

 また冒頭でも述べたとおり、こころの病気なのに身体の不調として表れますので、本人は自覚がなく、身体症状さえ治ればと内科等を転々とするケースが多いため、治療が遅れてしまいます。判断力が落ちて、ものごとを即決できないのでいらいらしてきます。老人なら、自分で決められない結果として前言を何度も撤回するため、ボケたのではないかと家族は内科や脳神経外科に連れていくケースもあります。

米国精神医学会診断基準(DSM-IV)によると、うつ病エピソードとして少なくとも以下の症状のうち5つが同時に2週間以上存在するとされます。
1)ほとんど一日中、毎日の抑うつ気分(ゆううつ気分)
2)興味、喜びの喪失
3)ダイエットなどなしに体重の減少、あるいは体重の増加
4)不眠または睡眠過多
5)精神運動制止(考えが先に進まない)、あるいは焦燥(イライラすることです)
6)疲れやすい、気力の減退
7)自分にたいする無価値感、過剰で不適切な罪責感
8)思考力や集中力の低下、決断困難
9)自殺念慮、自殺企図(実行するということです)

これは日本で大うつ病と訳されてしまっていますが、正確には
”それらの発症に、原因(理由)を問わない”主要な抑うつ状態”となります。
結局、上記の条件を満たすものはすべて診断してよいこととなりますので、もし失恋して激しい落ち込みが長期に続くなら、大うつ病になってしまいます。DSM-IVの当てはめ公式のみで診断する医療従事者なら、うつ病の範囲がひろがった可能性があります。

しかし、メランコリー型には以下のうち3つ以上が必要です
1)明らかな抑うつ気分
2)抑うつは決まって朝に悪化する
3)早朝覚醒(通常の起床時間より少なくとも2時間早い)
4)著しい精神運動制止または焦燥 →(上で解説した様におっくう感でいらいらすることです)
5)明らかな食欲不振または体重減少
6)過度または不適切な罪責感→ (必要以上に自分を責めるということです)
 
これも、誤解を招かないように解説します。
2)朝に悪化と書かれていますが、学校、会社や仕事場に原因があって行きたくないので憂鬱というのは誰しも同じです(私も以前勤めていた職場で研究成果の報告のある月曜の朝は憂鬱でした)。ですからこれでは正確に描写されていません。4)にある精神運動制止が悪化するのが午前中に多く、夕方から軽くなる傾向があります。従って、理由もなく本来あった能力が病気の症状によって阻害されるので結果的に自信を喪失し、不安になって憂鬱と解釈すればよいです。
次に6)は、日頃から自分に対する理想の高い人がいますが、現実がそれに至らず「そんな自分が嫌い」と言うひととたくさんあいましたが、それとはまったく違います。これは仕事にまだ結果が出ていないのに、根拠なく自分のせいで会社に迷惑かけた、とかこのままでは職を失って家族を路頭に迷わせる、、、と言ったようなある種の妄想に近いような考えの事です。 

伝統的に日本の医学部では精神科の教科書にドイツ精神医学が採用されており、すべての医師は(内科、外科を問わず)、うつ病と言えばこのメランコリー型を学んできているはずです。
上記アメリカの診断基準の原書を読むと、このメランコリー型が研究上の医学的所見がもっとも相関があると書かれています(原書419ページ)。

 先端科学では抗うつ薬がどの様に作用しているのか推測できる科学的なデータが集積された結果、メランコリー型うつ病に関しては脳の機能障害であろうと推測されており、このタイプなら薬で病状が改善することはわかっています。薬で治らないなら、このタイプではなかったとほぼ考えてよいと思われます。

 当院にこのメランコリー型(あるいは内因性)と診断できる方は数えるほどかいらっしゃいません!
ほとんどが目の前の具体的な事に対して憂鬱になっている方ばかりです。これは昔はうつ病とは言わずにうつ状態と言いましたし、今でも良識ある精神科医ならそう告げるはずです。あるいはその人を取り囲む環境が本人には”合わない””向いていない”と感じて苦しんでいるなら、適応障害と診断すべきです。

 このような患者さんには、環境調整や身近な方のアドバイスが必要でしょう。病院に来たなら、医師の面接が重要なのは言うまでもありません。

時々テレビに出てきて「うつ病は脳の病気なんですよ」と断言するお医者さんがいますが、その方々のうつ病の定義について尋ねてみたくなる時があります。
 「あなはこれを飲めば治る、と言われて出された抗うつ薬は効かなかった」と述べる患者さんや「抗うつ剤でうつ病は治らない」といった著書まで書いた体験者に対して、診察したお医者さんたちはどのように説明されたのでしょうか?薬が効かなかったので、「新型うつ病」とか「非定型うつ病」とか言うのもあまりにも無責任な気がします。

最近の日本精神神経学学会誌には「これまで莫大なうつ病が拡大診断されてきた。うつ病の中では、脳の機能障害で起こったうつ病はむしろ少ない(あるいは”少なかった”)と説明すべきだ」との寄稿が増えてきています。

また海外の文献を日本語に翻訳している医学ジャーナルも、「青年期のうつは、、」といった表現で「うつ病」と区別をはじめているのも良いことだ思います。
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