検討委員会傍聴記 11月9日 於:グランドインテリジェントホテル

 11月9日、広島市内で開かれた、細見谷渓畔林を縦貫する緑資源幹線林道建設に関する第3 回検討委員会の傍聴をしてきましたので報告します。
 今回は、審議すべてが公開で行われましたが、平日の開催ということもあってか、傍聴者 5名、報道機関2という寂しいものでした。公開審議それ自体は歓迎すべきことではありま すが、その内容たるや、それはひどいものでした。細かいことまで挙げればきりがないの で、ここでは幾つかの問題に絞って報告します。

 1.検討委員の資質に関する疑問
 傍聴していて気づいたのですが、この検討委員会が検討すべき課題を認識していないのでは と耳を疑うような発言が幾つかありました。まず、この林道が渓畔林を縦貫し、そのこと が渓畔林そのものの保全にどのような影響を与えるかということが、もっとも重要な検討課題であると私は考えています。しかるに、今回の検討委員会では、細見谷渓畔林の特殊性とその生態的意味に基づく議論がほとんどみられませんでしたし、そのことに言及する こともありませんでした。一部、道路建設による排水設備や舗装道路が周辺湿地を乾燥化 させる懸念が表明されたものの、問題は常に個別的でしかも、問題解決のはっきりした道 筋は語られずじまいということです。提起された問題は解決できるのか否か、かりにでき ないとすれば、そのときはどのような対応が考えられるかといったことはすべて曖昧なまま、事務局一任で報告書の書き方指南といった具合です。
 波田さんの渓畔林全体への影響を問題とすべきではとの問いかけに対し、座長の見解は、生態系全体やバイオマスへの影響を調べることは重要だが、それを調べる手だてはないし、時間もかかる(百年河清を待つと言っていました)ので、難しいとの一言で終わり。
 さらに鳥類関係の委員からは、それ(バイオマスの測定や渓畔林生態系全体への影響評価?)ができないので、鳥類としてはクマタカなどのシンボル的な種への影響を通して鳥類全体のことを考えざるを得ないといったような発言があったりと、渓畔林の保全問題をすべて矮小化した議論終始しています。極めつけは、水脈の分断に関して、ある委員の発言です。私の記憶が正しければ、その発言の内容は次の通りです。「林道は山の中腹を通すものではないので、水脈の分断にはほとんど影響はないでしょう。まして、谷底ですからほとんど問題はないと考えています」この瞬間、私は耳を疑いました。水辺の湿地林である渓畔林内に林道を敷設することはすべからく中止すべきであるとの認識は、渓畔林を知る人にはほとんど常識で、渓畔林研究会の編集による「川辺林管理の手引き」にもその点は繰り返し述べられているほどです。発言や思想は自由ではありますが、渓畔林の保全に重大な疑義があるからこそ、緑資源機構でも、渋々ながら検討委員会を設置しているのに、これでは「専門的、学術的見地から意見をいただく」という緑資源機構の言っていることが大変白々しいものに聞こえます。やはり、これは通過儀礼なのです。
 細見渓畔林の特殊性を考慮すれば、委員の中に、両生類、陸産貝類、水生昆虫を扱う生態学の専門家の参加が不可欠でしょう。傍聴している限り、湿地の生物相でもっとも直接的な影響を受け、しかも他の生物群の生活にも多大な影響を与える可能性が高いと推測される分類群の話はまったく出てきません。これで、渓畔林の保全策が検討されたことにされたのでは、たまったものではありません。
 確かに、生態系全体に及ぼす影響を評価することは難しく時間もかかります。しかし、細見谷の保全を最優先に考えるならば、時間をかけても舗装道路建設の是非を慎重に検討すべきです。こうした生物群集を成立させている要因の追求や、細見谷の特殊性、そこにおける各生物の生活実態を知ることが不可欠です。それさえもなく、RDB記載の個別種について、工事や完成後の直接的な影響のみを取り上げ、影響は軽微、少ない、ないといった判断が記載されていることが大きな問題です。さらにこの評価を巡って、軽微、少ない、 ほとんど無いといった違いは何かとの質問に対しても有効な回答はなく、表現の仕方を工夫してはといった類の議論が延々続くのです。

 2.舗装することによる影響評価がなされない
現在の砂利道を一部拡幅したり新設したりした上で路面を舗装する計画であるが、ある生物群に対しては路面が舗装されているか砂利のままであるかは、極めて大きな違いがあるはずなのに、その点に関してはいっさい検討されなかったと記憶している。一つだけ、チョウ(ミヤマカラスアゲハのことだと思うが)の吸水場なくなることの指摘がなされたが、それに対する機構側の回答は、林道上に水たまりがあってはならないということである。この点に関しても、私には疑問がある。なぜ、林道上に水たまりがあってはいけないのだろうか。渓畔林の生物多様性の保全を第一に考えるのであれば、場合によっては、多少の凸凹を有する水たまりのある林道でも良いのではないだろうか。林道上に水たまりがあってはいけない論拠は何であろうか?
 それはさておいても、林道が舗装されれば、路面の湿度、路面温度に大きな変化が生じる。こうした微気候の変化が道路周辺の生物、特に水生生物に大きな影響を与えるであろう。そしてそれは、渓畔林全体の生産量の変化、バイオマスの減少という形で極めて渓畔林生態系に大きな影響を及ぼすと考えられる。
 路面以外の周辺地域の陸水、伏流水の分布の変化等、検討すべき課題は多いにもかかわらず、議論が素通りしていくのは、検討委員が問題意識を持ち得ないからではないのだろうかと不安になった。この点に関しても、検討委員の構成に問題があります。

 3.交通量の変化や利用による環境への評価ができていない
 かつて交通量を350台/日と見積もられていたが、今回は192台/日と修正されていました。 この数値も相当にいい加減なものですが、たいした疑問もなく了承されたようです。この予想値は匹見町内や戸河内に設置された国土交通省のセンサーに記録されたものがベースになっているとのことでしたが、その資料に目を通すと、吉和-戸河内間の県道や益田-芸北ルートが故意かどうか、記入されていません。記憶をたどれば、受益地域住民の通行量が2台/日、ワサビ栽培関係が6台/日を含め、192台と言うことです。しかしこの地域には住宅はなく、住民の通行量は限りなくゼロというのが実態でしょう。また、ワサビ栽培関係にしても毎日通うといことはありません。毎週通っている私より頻度は少ないはずです。問題は、観光シーズンの春、秋の入れ込みの増加です。また、アウトドアー活動、渓流釣りなどの入れ込みが増え、別の問題(ゴミ、廃棄物、魚の乱獲等)を引き起こすことは必定です。
 このように、都合の良い資料から都合の良い結論を導いている嘘を指摘できない委員会はどう見てもおかしいと思います。波田さんが頑張っておられましたが、多勢に無勢といった感じです。
 車両の入れ込み増加にと伴う、排気ガス問題は議題にすらなっていません。クマ問題に関連しては、人との接触が増えることが問題との指摘もなされましたが、専門家もおらず議論とはなりません。クマの生息環境の変化(ブナ科の衰退、河川生物相の衰退、加工食品の投棄など)食料の質、量の変化が細見谷のクマの存続に危機的な状況をもたらすかも知れません。いわゆる有害駆除の対象となることも十分考えられるでしょう。
 こうした重要な案件についても、「細見谷がクマの重要な生息地であるかどうか不明」という態度をとる座長の下では、真剣な議論は期待できません。

 4.林道の利用目的に関して合理的な説明がない
 林道の設置目的が検討委員会の委員たちに明確に認識されていないようです。結論から言えば、波田さん以外は林業用道路と認識しているようですが、林業の実態や今後の予測に照らし、この道が林業用道路として活用されることは考えにくいにも関わらず、多くの委員が林業用道路とすることに何の疑問も抱いていないようです。林業用(森林整備用)であれば、現在の砂利道のまま整備していけばいいのですが、漠然と砂利道のほうが整備コストがかかるという前提で話が進んでいます。これは、資料に基づいた合理的な議論ではありません。また、1953年に建設されて以来、手入れがなされていないような意味の発言が座長からなされるなど、林道整備の問題と幹線林道化と混同するような意見が散見されます。建設コスト、維持のコストを正確な資料に基づいて議論することはもちろんですが、もう一つ渓畔林保全の価値をどのように評価するかも同時に議論の対象となるべきです。そのために時間がかかるのはやむを得ないでしょう。二言目には時間がないとの発言が座長からなされるのは、かなり問題です。今回傍聴した限りでは、委員の中には公団に気を遣う態度が発言の端々に見え、渓畔林の取り扱いは二の次という、いかにも慎重さを欠いた会議でした。

 何のために舗装するのか、それが公団の仕事だからという意外に説得力のあるものは見えません。アフターケア委員会としては、もう一度、こうした検討委員会のあり方に待ったをかけるための要求を至急すべきでしょう。
 工事方法や規模について、公団は譲歩の態度を見せていますが、それで渓畔林の保全が保証されるわけではありません。あくまで、計画を中止させ、細見谷の保全を図る必要があります。

 取り急ぎ、大きな問題点だけを報告します。
 近いうちに、一般からの意見聴取と必要な情報をお持ちの方の意見を聞く場が準備されるとのことです。どうやら、短時間で形だけ聞き置くことになりそうです。時間をかけて議論すべきものがたくさんあるのにもかかわらず、年度内での報告書承認に向けて、座長と公団の談合で進む気配が濃厚です。
 公開の場で、検討委員会の問題点を明らかにし、世論を喚起することも含めて、対策を練りましょう。
  11月9日、広島市内で開かれた、細見谷渓畔林を縦貫する緑資源幹線林道建設に関する第3 回検討委員会の傍聴をしてきましたので報告します。
 今回は、審議すべてが公開で行われましたが、平日の開催ということもあってか、傍聴者 5名、報道機関2という寂しいものでした。公開審議それ自体は歓迎すべきことではありま すが、その内容たるや、それはひどいものでした。細かいことまで挙げればきりがないので、ここでは幾つかの問題に絞って報告します。