第7回 影響調査検討委員会傍聴記 

HFMエコロジー・ニュース臨時増刊号 2005.06.13

 7月10に行われた第7回影響調査検討委員会を傍聴してきました。第7回目の委員会は、7月31日の任期を前に、最後の検討委員会となる可能性があるということで、警戒感を抱いていたのですが、結果としては3度目の任期延長を余儀なくされた模様です。細見谷渓畔林地域に生息するツキノワグマの問題が前回からの宿題となっており、事務局報告がありましたが、保全策を講じるためのデータを提出することができず、再度持ち越しとなりました。委員の中には明らかに早期決着を図ろうとする意図を露骨に示す委員もおり、緑資源機構からの働きかけを疑わせる結果になったようです。各マスコミの目にもそのように写ったのではないでしょうか。
 緑資源機構は過去の検討委員会を傍聴した市民から提出された様々な疑問、意見書にはまったく聞く耳を持たないようで、何とか着工に向けて好都合なデータを探しているようです。そうした報告があるたびに、傍聴者から事実誤認を指摘する声が上がり、どちらが正確なデータを持っているか、第三者には明らかな状況です。少し具体的に報告しましょう。
 ツキノワグマについて 
 緑資源機構の委託を受けたアセス会社がデータと情報の収集を行っています。その情報源は、現在西中国山地のツキノワグマの個体数調査を受託している自然環境研究センターの藤田さんです。かれは広く西中国山地各地で捕獲調査に従事しているので、西中国山地のクマ事情にはもっとも精通している一人であることは間違いありません。が、調査期間が7-11月に限られていることや細見谷の細かい状況にの把握という点に関しては当然限界があります。そうした事情もあって、細見谷のツキノワグマ保全に関わる議論ができるほど詳しいデータを彼一人から入手しようとするのはどだい無茶な話なのです(しかも聞き取りで)。ここのデータに関しては、私たち、広島フィールドミュージアムの一部の調査関係者しか知らないことがたくさんあります(昨年11月からイオン環境財団の助成を受けての調査での未発表資料があるため)。そのことを知っているNGOの皆さんからは、緑資源機構及び検討委員会の皆さんに対して、金井塚(西中国山地ツキノワグマ保護管理協議会委員・広島県RDB検討委員を歴任)を参考人として招致するよう要望書を提出しました。前回の検討委員会で、波田委員が、ツキノワグマの問題を提起し、哺乳類担当の鳥居委員に話を振ったところ、同委員は「西中国山地のツキノワグマ」に関しては知らないと発言したことがあります。つまり、この検討委員会ではツキノワグマの保全策を具体的に議論することができないということを明らかにしたのです。要望書はそれを受けてのものです。
 それはさておき、提出されたデータにはほとんど役に立つようなものがないことは、波田さんも委員会で指摘していました。この検討委員会に先立って、7月1日に浜田市で、西中国山地ツキノワグマ保護管理対策協議会が開かれ、委員であるわたしも出席しました。そこでの論議を紹介すれば、検討委員会での参考資料になったと思いますが、残念な事にその資料は出てきていません。
 午後、開催された講演会の席には緑資源機構の職員がおりましたので、これを参考にしたのかもしれませんが、実はこの講演会では、保全問題に関する核心的な話は当然出てきません。機構はあくまで、自分たちに不利になるような話題を提供される恐れのある人物は決して呼ぼうとしません。この点は、良識ある検討委員から委員会の席上で提案して頂くしか有効な方法はないかも知れません。
 また、わたしは所用で一番最後のところを聞くことができなかったのですが、工事が始まったあとのモニタリングを行う、フォローアップ委員会(仮称)のようなものの設置を考えているとの事でしたが、これもふざけた話で、機構が設置し、委員会の構成も、「機構、アセス関係者、学識経験者」だけで、地元で研究活動を進めているNGOは排除されています。
 これでは、検討委員会と同じではありませんか。検討不能な委員会でどうやってモニタリングをし、問題を指摘し、工事を止めさせることができるでしょうか。機構は徹頭徹尾、アリバイ作りに狂奔している様を露骨に見せています。
 哺乳類に関しては、鳥居員から、意見聴取で上がってきた質問にあった、モグラの同定とアナグマの生息確認をという注文がついています。これ以外にも、コテングコウモリが林道脇で活動していることや、オシドリの繁殖の可能性を確かめるなど、重要な調査が済んでいません。この点を、委員会では真剣に議論し、検討して頂きたいのです。
さらに供用開始後の予測調査をもっと厳格にするよう注文します。カラスの侵入はないなどという、あきれた見解が示されていますが、日本中どの地域(かなりの高々度でも)でも観光客が増加すればカラスが侵入するのは常識と言える問題です。
 両生類や水棲昆虫などの議論はもうほとんど素人以下の議論です。こうしたものが、専門的・学術的とされてはかないません。もっと専門的な議論ができるよう、工夫する必要があります。現地の状況をもっともよく知るNGOの協力を得て、学術的・専門的なレベルを保つようにしなければなりません。委員の皆さんには、これまでの質問書や要望書、意見書が渡っているはずです。もう一度精査して、検討すべき課題について議論の場に戻してもらうよう要望しなければならないでしょう。
 植物に関しては、NGOが主体となっての調査で、新設・拡幅部分にも貴重な植物群落が見つかり、その保全についての要望が出されていますが、まったく無視されたままです。これも検討委員の皆さんの手元に届いているはずです、再点検をお願いします。
 どの分類群からみても、機構側が提出した保全に関する報告書案は完全に破綻しています。林道の必要性も保全策も破綻した計画は葬り去らねばならないでしょう。