Khao Yai National Park
Ecotour Report
 広島フィールドミュージアムが主催する、タイ国・カオヤイ国立公園での第4回エコツアーの報告です。
これまでのエコツアー
第1回 2004年2月8日〜15日(7泊8日・涼季・乾季)  第2回 2005年2月9日〜16日(7泊8日・涼季・乾季)
第3回 2005年9月18日〜25日(7泊8日・雨季)いずれも関空出発。
今回は、広島−バンコク直行便が開設されたのに伴い、広島発のバンコクエアウエイズを利用し、15日間のツアーを実施。

観察指導・案内:金井塚務・杉島洋(広島フィールドミュージアム)

日程 2006年3月27日〜4月10日(13泊15日)

3月27日7時30分広島空港集合 9時40分発 PG412便 14時35分着(BKK) ミニバスにてカオヤイ国立公園へ(17時着)
3月28日〜4月2日までカオヤイ国立公園ハウス滞在、終日観察
4月3日 10時 カオヤイ国立公園発 ドンムアン空港へ  15時25分発 チェンマイへ 16時35分チェンマイ着
4月4日 ドイインタノン国立公園
4月5日 ドイスティープ国立公園・チェンマイ動物園見学
4月6日 チェンマイ国立博物館見学・市内観光・書店にてショッピング
4月7日 10時40分 チェンマイ空港発 11時25分 ドンムアン空港着。 シリラート解剖学博物館見学
4月8日 ウィークエンドマーケット・水上マーケット観光
4月9日 ドゥッシト動物園見学、夕食後 ドンムアン国際空港へ
4月10日 0時40分発 PG411便にて帰国 8時広島空港着 解散

今回は初めての暑季ということもあって、どのような生き物に出会えるか期待と不安が交錯していたが、「案ずるより産むが易しのたとえ通り、期待していた以上の成果が得られた。その一部をここに紹介することにしよう。
 今回は、カオヤイ国立公園に加えて、チェンマイのドイインタノン国立公園まで足を伸ばすことに。参加者は若者3人。いつものように、タイ・チュラロンコーン大学の大学院生の皆さんがボランティアで協力してくれた。
 日タイ学生交流の場でもある。
 シロテテナガザル Hylobates lar

 私たちの最大の関心事はなんといっても、シロテテナガザルの動向である。2004年2月から追い続けているコンケウ群に新生児が誕生していた。その一方で、成長して群れを出て行くものもいる。長年の連続観察のおかげで、ひと味違った、観察が可能となっている。
 イチジク(Ficus sp)の樹上で毛繕いをしあう(J群、性別不明) 








 滞在中に、コンケウ(Koung Kew群)の若者(性 別不明)は、両親たちと離れて行動していたようだ。この個体が本当にコンケウ群のメンバーなのか、外からやってきたものなのか最終的な確認はできなかったが、群れを離れていく過程の一こまである可能性が高い。もう2日ほど時間があれば確認できたのだが…。
 ホエジカ Muntiacus muntjak 

 今回は、ホエジカによく出会った。名前とは裏腹に、ほとんど声を立てることはない。生まれたての赤ん坊が地面の枯れ葉の中に埋もれているのを見つけたが、写真だとどこにいるのかほとんどわからない。ということでその写真ははいずれかの機会に。
 クロオオリス Ratufa bicolor

 カオヤイ・ハウスでは居ながらにして様々な生き物に出会うことができるが、中でもフィンレイソンリスとこのクロオオリスは常連客である。
 枝の上で休息しているときには、長い尾をだらりと垂らしているが、ひとたび動き出すとそのすばしこさは予想を超える。枝から枝へとかなりのジャンプ力を披露してくれる。ニホンにいるテンを一回り大きくした位の体つきの大きなリスだ。
 ホオジロシマリス Tamiops mcclellandi

 クロオオリスとは反対にこちらは小さな珍客である。2004年の2月のツアーで出会って以来出会うことはなかった。大変小さなシマリスですばしっこい動きでは、お目にかかれないのも道理である。今回は、じっくりと観察することができた。
 オオサイチョウ Buceros bicornis

 カオヤイ国立公園での楽しみの一つは、このオオサイチョウとの出会いである。奇っ怪な容貌もさることながら、その羽音のすさまじさは、想像を絶する。暑季のこの頃は、子育ての最終段階らしく、メスも巣穴から出て、ペアで行動していた。日なの巣立ちまでもう少し。
 
 シワコブサイチョウ Aceros undulatus

 体の大きさはオオサイチョウとほとんど変わらない。羽音もしかり。ただ尾羽に黒い縞模様がないので、見分けはそう難しくはない。ただ、このシワコブサイチョウは今回初めてお目にかかった、というか、初めてそれとして観察したというべきか。雨季に群れをなして富んでいたサイチョウはもしかしたら、オオサイチョウではなく、このシワコブサイチョウだったかもしれない。
 嘴の付け根にある瘤と上下の嘴にしわ模様ががある。さらにのど元には鮮やかな黄色い袋が目立つ。頭の後ろには朱茶色の羽毛があって、ときにそれを逆立てる。オオサイチョウと同じイチジクの木にやってきて、それぞれ心おきなくイチジクの実をついばんでいた。
 ジャワマメジカ Tragulas javanicus

 シカという名がついているが、シカの仲間ではない。猫ほどの大変小さな有蹄類で、ほとんど見かけることはない。夜、ヘッドライトをともして林内を歩いていて、見つけた。トゲだらけヤシの茂みに潜み、じっとしていた。もし目が光らなければ絶対に見つけることはできないだろう。これが夜の楽しみでもある。
 トビトカゲかキノボリトカゲか知らないが、この仲間には結構出会う。のど元のヒダを開いたり閉じたりするたびに、黄色い旗を振っているようでなかなかユーモラスである。
しかし、背中の色は木肌そのもので、動くか横から眺めるかしないと見つけにくい。
 カオヤイには、これ以外にも、ヤモリの仲間が多く、トッケイ・トッケイとなくヤモリや、ゲッコウ・ゲッコウと叫ぶような声を出すヤモリも宿舎によくやってくる。
 ウォータードラゴンと呼ばれるトカゲの仲間のようだ。一度、ノンパクチーの砂場で見たが、今回は樹上でお目にかかった。解説書によれば、川面にかかる木の枝で休息していることがある、とあって、まさに教科書通りの出会いであった。これも夜間観察で見つけたのだが、昼間だったら果たして見つかっただろうか。
 ビントロング  Arctics binturong

 日本ではあまりなじみのないケモノだが、樹上から降りてくるその姿は、もしかしてクロヒョウ?といった大きさのシベット(ジャコウネコの仲間)。しかしノソノソと歩く姿からは精悍さはない。ラブラドールの顔を縮め、尾を長くしたような風体で、樹上を好む。これまでなかなか出会うこともかなわず、幻のケモノだったが、今年は豊作のイチジクのおかげで、よく出会うことができた。これは一見の価値は十分ある。
 ミスジパームシベット Arctogalidia trivirgata

 背中に沿って黒い3本のストライプ、尾にははっきりしない黒いリング模様。地味なシベットだ。シベット類は総じて、ゆったりとしている。決してあわてて逃げることもない。ライトに照らされながらもゆっくりとイチジクの実を採食したり、休息したりしている。シベット類の観察は夜に限るが、車でのスッポトライティングではこうした楽しみは味わえない。
 コモンパームシベット
 Paladoxurus hermaphroditus

 一見タヌキのような風貌をしている。道ばたの桑の木に2-3頭が集まっていた。 
 ヒダクチオヒキコウモリ  Tadarida plicata

 カオヤイ国立公園の北端に位置する石灰岩洞窟には、多くの鍾乳洞があり、そこにヒダクチオヒキコウモリが数百万頭も暮らしている。
 夕方、洞窟から飛び出したコウモリはまるで黒煙のごとく黒い帯となって黄昏時の空を群飛する。その帯は、あるいはちぎれ、あるいは合流して、まるで一つの有機体の運動を見ているような錯覚に陥る。双眼鏡でみれば、一つ一つの点は紛れもなく一匹のコウモリなのだが、その総体は、別な生き物(龍)と見まごうのも無理はない。




 写真にある山は、カオ・ルクチャーン(子象山の意)で、この山腹にある洞窟からも、おびただしい数のコウモリが飛び出す。その際に、サラサラサラサラといった羽音が麓の観察者にまで届く。
 アジアゾウ Elephas maximus

 カオヤイ国立公園には野生のアジアゾウが暮らしている。宿舎近くの森にも、比較的新しい痕跡が残されており、いつ出会うか、期待と不安が交錯していた。今回を含めて5回、このカオヤイ国立公園を訪れているが、最近2年ほどお目にかかっていなかったし、前回、前々回は痕跡すら乏しかった。しかし、今回は宿舎付近に新しい痕跡があって、期待を膨らましていたのだが、いつもお世話になる、ヤーさん(公園職員)によれば、出会いは難しいだろうという。
 しかし中日に、恒例の焼き肉パーティに出かけたさいに、道ばたに比較的新しいフンを見つけ、あるいはと登期待していたとおり、チャーンの群れに出会うことができた。
 なんとも、贅沢な1週間であった。