ツキノワグマの暮らし
西中国山地にはツキノワグマ(Ursus thibetanus)が生息しているが、その数は多くはない。これまでの調査では、5000平方キロメートルほどの生息区域におよそ280〜680頭(中央値480頭)のツキノワグマが生息しているという。その個体群は孤立しており、絶滅が心配されている(絶滅の恐れのある地域個体群・環境省RDB)。

その一方で、年々、人里へ出没するクマが増え、有害鳥獣の名の下に駆除されている。そこで、広島・島根・山口の三県が共同して、クマの個体群保護に取り組み始めたが、その関心の中心は、毎年何頭まで駆除が可能かというもので、積極的なクマの個体群保護とはほど遠いものといわざるを得ない。
 生息環境が悪化し、個体群が分散せざるを得ない状況の中にあって、細見谷はツキノワグマ個体群保全の要となる貴重な地域である。まさにツキノワグマにとってはここが最後のよりどころなのだ。そんな細見谷に、大規模林道という大型公共事業が計画され、今まさに着工されようとしている
時計が気になるのか、臭いを嗅いだ後、向きを変えてしまう。2005.10.31.15.:32 活動するのは夜間とは限らない
ヤマザクラにやってきたクマ ここはクマのトイレ?あちこちにクマのフンが。
そのサクラの木の近くには、たくさんのフンが残されている。中にはフンの臭いを嗅ぐものもいる。
昨年(04年)秋の凶作にもかかわらず、細見谷ではクマの新生児の姿が。05/09
クマがやってくるヤマザクラは林道の脇にある 少しわかりにくいが、たくさんのフンが残っている
クマのトイレに残されてたフン。右のフンにはノウサギの獣毛が含まれていた
ササを食べたクマのフン。カラマツなどの樹脂と一緒に食べたようだ(右)
ウワミズザクラを食べたクマのフン クマのフン・(内容物はミズキ)
ミズナラを食べたクマのフン、2004年秋 トチの実を食べたクマのフン
サルナシなどの液果を食べたクマのフン ミズナラを食べたクマのフン、2003年秋
2005年の秋はウラジロ、アズキナシが豊作で、大量のフンが見つかった。黒いフンはミズキを食べたフン
ウラジロの果実 フンの中身はウラジロの趣旨がいっぱい(2005)
クマの爪痕が残るウラジロノキの幹(2005.11.8) アズキナシとともにウラジロノキにもクマ棚ができていた
ゴギの産卵床が連続する沢で、一つのフンを見つけた。昨年、怪我をしたゴギが見つかった場所のすぐ近くだ。このフンを洗って、内容物を調べてみたが、有機物はあまりに細かくて、残滓は残らなかった。残ったのは、川底の砂礫、これは産卵床に使われる場所で見つかるのと同じ大きさの砂礫である。また、イヌブナの堅果も見つかったが、これも川底に沈んだ物のようだ。
これらの残滓からは生臭い臭いがしていた。つまり、状況的には、クマがゴギを川底の砂礫ごと飲み込んだフンである可能性が高い。
この直後、クマに出会ったのだが…。
2005.11.8
ブナの幹についたツキノワグマの爪痕。ブナはツキノワグマにとって大変重要な食物の一つである。とはいえ、ブナの実が豊作となるのは5-6年に一度である。 ブナの花芽を食べたツキノワグマのフン。(2003年5月)
ツキノワグマに襲われたゴギ(手前はメス) 詳しくは画像をクリック
タヌキを捕食した?関連ニュースあり画像クリック ミズナラにできたクマ棚
倒木の中にいた昆虫類を食べた痕跡 ミズナラの堅果を食べた痕
ツキノワグマは、アカマツ、カラマツ、ツガといった針葉樹の樹脂を食べる。樹皮を剥がされた幹からはヤニが吹き出し、そこに爪や歯の跡が残されている。初夏に食べていた例が知られているが、通年を通した利用実態はよく分かっていない。 ツキノワグマは、樹上での採食を頻繁に行う。木登りはかなり巧みだ。安定した枝の上に座り、実のなっている枝を引き寄せて折って食べる。食べ終えると、その枝は尻の下へ押し込むので、折れた枝が棚のようになる。これがクマ棚である。写真はミズキにできたクマ棚。ブナやミズナラ、クリ、ウワミズザクラなどの果実を食べるときにもできる。
シシウドの食痕(春-初夏) オタカラコウもよく食べる(春-初夏)
スギの木に残るクマの爪痕、クマは意外に樹上で休息していることが多いようだ。 ホオノキに残る樹皮食いの食痕。その両脇にはくっきりと爪痕が残る。
トチノキの根元にできた樹洞。入口付近にはクマが出入りした痕跡が残る。細見谷渓畔林にはこうした樹洞が数多く残る。 右写真の樹洞の内部。人間の大人が2人は入れる広さがあり、天井は煙突状に抜けて、適度な換気ができる快適な樹洞である。