犬 島

 犬には犬神という俗信もまつわりついている。飢えた犬に食物を見せて首を打ち落とし、その首を器に入れて置き、犬の霊を使う呪術者を犬神使いという。犬神にとり憑かれた人々は精神に異常をきたすという。

 岡山市久々井にある犬島は、児島湾の海上に浮かぶ小島であるが、その絶頂に犬のうずくまった格好の岩があるので、犬島の名がつけられたという。『地名辞書』によると、この巨岩を島民は犬石明神と称したそうだ。そして犬神憑きの者がこの島にやってきて、犬石明神を礼拝すると、犬神は退散するという俗信があり、また性悪の犬をこの島に放つと、その性が改善されるという言い伝えもあった。「枕草子」に時の帝の寵愛していた猫に、翁丸と呼ばれる犬が噛みつこうとしたので、翁丸を叩き「犬島につかわせた」とある。その犬島をこの地に当てる説もある。もともと犬島は無人島だったが、元禄年間(1688〜1704)に開発されたという。してみると、それ以前は凶暴な犬だけが住んでいた殺風景な島だったのだろう。 

岩波新書「続 日本の地名」より

 

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