表紙写真解説
|
牛窓(岡山県瀬戸内市) 江戸時代、この地には朝鮮からの通信使が寄港した。今に伝わる唐子踊りは、朝鮮からのものと言われている。 牛窓という地名は「うしまろび」という言葉が転化したという伝承がある。「まろぶ」とは転倒する、倒れるという意味だ。伝承は、住吉明神が神功皇后を助けるため、海から現れた大牛を投げ飛ばしたというものである。 谷川健一は「海」に注目し、「まろぶ」とは単に倒れたのではなく、牛を屠殺して海神に供えた場所ではないかと言う。沖縄では豚を殺し、その頭を海に沈めて竜宮の神に捧げるといい、また和歌山では雨乞いの時に牛を殺して祈る例があるという。 殺牛儀礼は中国にみられ、古くから大陸と交渉のあったこの地に、こうした風習があったとしても不思議ではないとしている。 今は日本のエーゲ海などと言われるほど、穏やかな海とオリーブ栽培が観光の目玉になっている。こんな風景からは想像もできないが、やはり地名には忘れられた日本がまだまだ隠されているかもしれない。 写真家 西 村 文 一 |