後見には、親権者のいない未成年者を保護するための制度である未成年後見(民法第838条)と精神上の障害
(認知症、知的障害、精神障害等)により事理を弁識する能力(判断力)が不十分な成人を保護(支援)する制度として の成年後見があります。成年後見は、法定後見と任意後見に分けることが出来ます。
法定後見は、事理弁識能力の欠ける程度によって、重いほうから後見(同第7条)、保佐(同第11条)、補助(同第
15条)に分かれます。その違いは、後見は「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」であり、保佐は「事理を弁識す る能力が著しく不十分である者」、補助「事理を弁識する能力が不十分である者」です。『欠く常況』にあるのか『著しく 不十分』であるのか、単に『不十分』であるかは、家庭裁判所の審判によって決まる訳ですが、後見と保佐について は、医師による鑑定が予定されています。
鑑定の結果、保佐開始を求めたが、(成年)後見開始が相当とされる等、申立と異なる結果が出ることがありますが、
この場合には、(審判の)申立の趣旨の変更手続きを取ることが出来ます。
一旦成年後見等が開始すると、本人(成年被後見人)が死亡したり、判断能力が回復して後見等の開始が取り消され
るまで成年後見等は続きますから、遺産分割等の必要から後見開始がなされて当面の目的が達成されても、成年後 見人等の職務は継続しなければなりません。
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人となり、成年後見人が付けられます(同第8条)。成年被後見人の行為
は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて、すべて取消すことが出来ます。取消されるとその行為は初 めから無効であったことになります(同第121条)。契約をしたのなら、契約は無効であったことになり、互いに相手方 に対して原状回復の義務が生じます。支払ったお金は返還してもらうことになり、受け取った商品は返還するということ になります(不当利得の法理が適用されますが、その範囲は現存利益です)。取消の方法は、相手に対して取り消す旨 を通知します(同123条)。取り消すことのできる者は、本人、その代理人、承継人、同意をすることのできる者です(同 120条)。
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人となり、保佐人が付けられます。被保佐人が、一定の行為をするには、保佐
人の同意を必要とし、同意を得ないでした被保佐人の行為は取り消すことが出来ます。一定の行為は、
@ 元本を領収し、又は利用すること。
A 借財又は保証をすること。
B 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
C 訴訟行為をすること。
D 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をい
う。)をすること。
E 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
F 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
G 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
H 民法第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
です。ただし、上記には日用品の購入その他日常生活に関する行為は除かれます。また、審判によって、上記以外の
行為を付け加えることが出来ます。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は付け加えることが出来ませ ん。また、特定の法律行為について、保佐人に代理権を付与する旨の審判を求めることが出来ます。(同第876条の 4第1項)
補助開始の審判を受けた者は、被補助人となり、補助人が付けられます。補助開始の審判は、被補助人が特定の法
律行為をするについては補助人の同意を得なければならないとする審判又は、補助人に特定の法律行為について代 理権を付与する審判とともにされます。補助人の同意を得なければならない行為であって同意を得ないでした行為は、 取り消すことが出来ます。特定の法律行為は、被保佐人が保佐人の同意を得なければならない上記@からHまでの 行為の内の一部でなければなりません。
成年後見人、保佐人、補助人は、それぞれ家庭裁判所の開始の審判とともに職権で選任されますが、必要があるとき
は、親族等の請求又は、職権で、後見人、保佐人、補助人の事務を監督するために、後見監督人、保佐監督人、補助 監督人を選任することが出来ます。後見人、保佐人、補助人、後見監督人、保佐監督人、補助監督人の報酬は、有償 と無償の両方の場合があります。また、補佐監督人がない場合に、保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益 が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません(第876条の 2)。
後見監督人の職務(第851条)
1 後見人の事務を監督すること。
2 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
3 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
4 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
保佐監督人の職務(876条の3)
1〜3 後見監督人に同じ。
4 保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為について被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意すること。
補助監督人の職務(876条の8)
1〜3 後見監督人に同じ。
4 補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為について被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意すること。
後見開始の申立ができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐
監督人、補助人、補助監督人又は検察官と、市町村長です。
保佐開始の申立ができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検
察官と、市町村長です。
補助開始の申立ができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検
察官と、市町村長です。
任意後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分となる前に、そうなったときに備えて、あらかじめ
自分の生活や療養看護、財産の管理について、信頼できる者に委託をし、その者に代理権を与える委任契約(任意後 見契約)を結んでおき、事理を弁識する能力が不十分となったときに、その契約の効力が生じる旨定めておくという制 度です(任意後見契約に関する法律)。任意の委任契約によるところから、法定後見と対比して任意後見と呼ばれま す。任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によってしなければなりません(同第3条)。任意後見契約公正証書 が作成されると、公証人の嘱託により登記がされます。任意後見契約が登記されている場合に、本人が、事理を弁識 する能力が不十分となったときは、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者が、家庭裁判所に任意後見 監督人の選任を請求します。審判によって、任意後見監督人が選任されたときから、任意後見契約が効力を生じ、任 意後見人が職務を開始します。
法定後見と異なり、任意後見人には、本人がした行為の取消権はありません。本人が、任意後見人の知らぬ間
に、任意後見人に委任した本来は後見事務に属する行為を、単独で行った場合にも、任意後見人において、当然には 取り消せません。取消は、一般の場合と同様に、民法や消費者契約法、特定商取引に関する法律等によらなければ ならないことになり、法定後見に比して、本人の保護に欠けることになります。取消権が与えられなかったのには立法 上の理由があるのだと思いますが、取消権を与えても別段不都合になるところはなく、制度の欠陥のように思えてなり ません。
任意後見契約は、任意後見監督人が選任される前においては、本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認
証を受けた書面によって、解除することができます。
任意後見監督人が選任された後においては、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の
許可を得て、解除することができきます(同第9条)。
任意後見監督人の職務は、
@任意後見人の事務を監督すること。
A任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。
B急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
C任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。
です。
また、任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事
務若しくは本人の財産の状況を調査することができます。
さらに、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求
め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分 を命ずることができます(同第7条)。
任意後見人の解任 任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁
判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができます(同第8 条)。
任意後見契約を締結した後でも、法廷後見を申し立てることができます。任意後見監督人が選任される前に後見開始
等の審判がされた場合は、任意後見契約の効力は失われませんが、任意後見監督人が選任された後に後見開始等 の審判がされた場合は、任意後見契約は終了します。
事理を弁識する能力の不十分な成人を保護(支援)する方法は、法定後見と任意後見に限られません。意思能力があ
る場合には、通常の代理人を選任したり、委任したりすればそれで足りるのですが、こうした代理や委任は、法定後見 と任意後見のように登記することが出来ません。後見登記は開示されますから、行為能力に制限があって取り消され る危険があるとなれば、取引の相手方としては、法務局の発行する証明書を求めることが出来ますので取引の安全に も役立ちます。
実際には、@任意後見契約と併せてに通常の委任契約(代理権の付与を伴う)を締結することが多いようです。任意後
見契約が発効しない間は、通常の委任契約に基づき、受任者の立場で、本人に代わって通常の委任事務を行い、任 意後見契約が発効したときからは、任意後見人の地位で職務を行うことになりますから、即時に保護を必要とするとき にも対応が可能です。Aすでに軽度の認知症は認められるが契約を締結する能力は失われていないというときには、 任意後見契約と同時に任意後見監督人の選任を請求するということも出来ます。この場合は、@と異なり、任意後見 監督人が選任されるまでの数ヶ月間は、保護(支援)の空白が生じることになります。
ノーマライゼーションは、「社会の仕組みによって、ハンディを持っている人の生活を支える」という考え方です。
自己決定権の尊重と残存能力の活用、「人は、愚かなことをする権利も持っている」という基本的な考え方。悪徳商法
にあって、多額の債務を負担することになっても、本人が敢えて支払うというのならば、その意思は尊重されるべきであ る。なぜなら、自分の財産と残された能力を使って、自分の人生を生きることを、何人も取り上げることはできないので あるから。失われた能力の部分は、第三者の支援によって補うべきであるという考え方です。
費用と報酬(大阪家庭裁判所) 報酬、日当・旅費には別途消費税を申し受けます。
法定後見開始の申立
後見・保佐・補助 申立手数料(収入印紙) 800円(代理権、同意権の付与の申立を含む場合は
各800円追加)
登記手数料(収入印紙) 2,600円
郵券 3,400円
鑑定料(後見・保佐) 50,000円〜100,000円(申立時に10万円を予納)
報酬(申立書作成・提出) 100,000円
旅費(2日) 10,000円
消費税 5,500円
源泉所得税(−) 10,000円
実費(戸籍謄本、証明書等発行手数料・通信費)
任意後見契約(公正証書)
公正証書作成基本手数料 11,000円
登記嘱託手数料 1,400円
登記手数料(収入印紙) 4,000円
その他(正本証書代・郵送料)
報酬(任意後見人就任) 協議により
日当・旅費等 協議により
任意後見監督人選任の申立(家庭裁判所)
申立手数料(収入印紙) 800円
登記手数料(収入印紙) 1,400円
郵券
報酬(申立書作成・提出) 70,000円
旅費 5,000円
消費税 3,750円
源泉所得税(−) 6,000円
実費(戸籍謄本、証明書等発行手数料・通信費)
土・日・祝・夜間 無料相談ダイヤル 06-6853-2486 (8:30〜21:00)
平日 無料相談ダイヤル 06‐7711‐1801 (8:30〜18:00)
電子メール又は電話によるご相談は無料です。面談は予約をお願いします(平日は20時(終了)まで)。相談料は
5,000円(別に消費税250円)です。土・日・祝も電話による相談をしますので、曜日・時間を気にせずにおかけくださ い。場合により出張も致します。事件を受任したときには、相談料は報酬の一部に充当します。
司法書士には、守秘義務が課せられますし、公正かつ誠実に事務を行わなければならないところから、仮名や住
所氏名の表示のない相談にはお答え出来ないことがあります。 |